<例題>半径 6 の大円の内側に、図のように、中心が A、B、C、D、E の円が外接してい
る。円 A、B、C、D の半径が 2,b,c,d のとき、円 B,C、D の半径を求
めよ。
<解答>点 O を反転の中心、反転半径を 12 とする反転変換すると、大円は x=12、
円 A は x=36 に移り、円 C は C'、円 B は B'、円 E は E' に移る。
円 B' の半径 (36−12)/4=6、|OB'|=12+6=18
円 B' から、円 B へ逆反転変換させると、
定理−5 の半径の公式 k2r/(g2−r2) から、
b=122×6/(182−62)
=144×6/288
=3
同様に、円 E' の半径 (36−12)/4=6、|OE'|=36−6=30
円 E' から、円 E へ逆反転変換させると、
定理−5 半径の公式 k2r/(g2−r2) から、
e=122×6/(302−62)
=864/864
=1
円 C' の半径は (35−12)÷2=12
3平方の定理より、
|OC'|2=|OH|2+|HC'|2
=|OH|2+|C'B'|2−|B'H|2
=242+182−62
=864
円 C' から、円 C へ逆反転変換させると、
定理−5 の半径の公式 k2r/(g2−r2) から、
c=122×12/(864−144)
=122×12/720
=122/60
=12/5
(答) 円 B,C,D、E の半径は、3、12/5、12/5、1
これは行けます。ネット上にある解答なんか、見ちゃおれません!!!
反転すると、円の中心や半径が簡単に分かってしまう。実は・・・、そうなるよう
な反転を選んであるから・・・。これを使って、逆反転をさせて、元の図形の中心や
半径が求まります。こんな解法が、江戸の昔、日本にあったそうです。これは補助線
を使って解く方法の延長上にあったと考えられます。ユークリ幾何幾何学に限定され
た江戸のカミソリ頭脳は、何を考えて・・・、どんな補助線を引いて・・・、解いて
おったのか・・・、ちょっと想像も出来ませんねぇ・・・???
下記ページの複ベクトルを使った解答は、確かに剃刀頭脳が不要になるものの、こ
うまで計算が長くなっては、とてもやっていられません。これではデカルトさんに文
句を言えませんねぇ・・・!!!
江戸の和算家の解答は、こうではなかったらしい。
和算に資料を調べていませんが、和算家に近い解答を追加。
<例題>半径 6 の大円の内側に、図のように、中心が A、B、C、D、E の円が外接してい
る。 円 A、B、C、D,E の半径が a,b,c,d,1 のとき、円 A,B,C、
D の半径を求めよ。
<解答>定理ー6 より、左の問題の図形を反転変換させて、大円と円 E が同心円、右の図に
移る反転変換が存在する。
図にある接点 P、Q、R、S が P'、Q'、R'、S' に移るとする。
定理ー9 より、複比は保存されるから、
(PQRS)=(P'Q'R'S')・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
条件より、(PQRS)=(PR/QR)÷(PS/QS)
={(12−2b)/(2)}÷{(12/(12−2a)}
=(6−b)÷{6/(6−a)}
=(6−b)(6−a)/6・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
|P'Q'|=2x、|Q'R'|=2y とすると、△C'E'A' は直角三角形であるから、
(x+y)2+(x+y)2=(2x)2
2(x+y)2=4x2
(x+y)2=2x2
x+y=21/2x ∵ x>0、y>0
y=(21/2−1)x
上の式より、
(P'Q'R'S')=(P'R'/Q'R')÷(P'S'/Q'S')
={(2x+2y)/(2y)}÷(4x+2y)/(2x+2y)
=(2x+2y)2/2y(4x+2y)
=(x+y)2/y(2x+y)
={x+(21/2−1)x}2/(21/2−1)x(2x+(21/2−1)x)
=(21/2)2/(21/2−1)(21/2+1)
=2/(2−1)
=2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
(1) に (2)、(3) を代入、
(6−b)(6−a)/6=2
(6−b)(6−a)=12・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
条件より、a+a+1+1+b+b=12
a+b=5・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
(4)、(5) より、 ab=6
a+b=5、ab=6、a<b より、a=2,b=3
条件より、(AC)S=(AO+OC)S=(AO)S+2(AO・OC)+(OC)S
2(OA・OC)=(AO)S+(OC)S−(AC)S
=(4)2+(6−c)2−(2+c)2
=48−16c
OA・OC=24−8c
同様に、OB・OC=18−9c
条件より、AO:OB=6−2:6−3=4:3
3・AO=4・OB
◎=3・OA+4・OB
0=3(OA・OC)+4(OB・OC)
上の式より、0=3(24−8c)+4(18−9c)
=(6−2c)+(6−3c)
=6−2c+6−3c
5c=12
c=12/5
d=c=12/5
(答) 円 A,B,C,D の半径は、2、3、12/5、12/5
これは「反転変換を使っても、反転の中心、反転円の半径」を使うと大変になる
から、これを避けた解答です。最初はこの種の問題を反転を使わないで解いている
うちに、必要に迫られて、反転に到達したのか・・・、あるいは、数学史家が知ら
ない秘密のルートで、西洋から反転を輸入したのか・・・??? 江戸時代は鎖国
ではあったものの、外国から色々な知識が可也入って来ているようです。和算家が
これを「秘伝」にしておったようですから、真相は分かりません。
江戸のカミソリ頭脳の創造性は・・・?
参 考
1/a+1/b=1/2+1/3=5/6,1/c+1/d=5/12+5/12=5/6
1/a+1/b=1/c+1/d
この式は一般化出来て、これを法道寺善の式と言います。この式は上記の例題等
を解くのに使われた式のようですから、例題の答えを使って証明するのは、実は、
トンチンカンです。
複比は下記リンク先にあります。
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